黒い龍は小さな華を溺愛する。


こんな温かい場所から離れるなんて考えたくない。

ずっとここにいたい。

でも……。


「食っていい?」


「でもぐちゃぐちゃになってるよ……」


「たいしたことねぇよ」


そう言って、迷わずバクバク食べていく。

「全然いい。てか、うまい」

優しく笑って、少し焦げたから揚げも美味しそうに食べてくれた。

「早起きして作ってくれたんだろ?」

頭をぽんと撫でられて、さらに涙が止まらない。

「……常盤くん」

「俺は沙羅とここに来れて、それだけでも嬉しいのに弁当まで作ってくれてマジで幸せ」

「うん……私も」


「この事が気になってさっきから上の空だったんだな」


常盤くんはそう言って、私の頬に親指を伸ばした。

涙で塗れた目元をそっと拭いてくれる。

この事だけじゃないけど……。

言えるわけがない。

「せっかく来たんだから楽しまねーともったいねーよ」

「うんっ」


今日は考えるのをよそう。

せっかく常盤くんが笑顔なんだから。

私は気持ちを切り替えてイルカのショーを楽しんだ。