黒い龍は小さな華を溺愛する。


常盤くんのこと、知ってるつもりでいた。

あの夜教えてくれて、もう分かち合えてるものだと思っていた。

私のこと、重荷になってるの……?

常盤くんは優しいからそばにいてくれてるの……?

涙で視界が歪む。


戻った後も心ここにあらずで。

常盤くんが何度も私の顔を盗み見てるのはわかっていた。

うまくごまかしてるつもりなのに。

ペンギンの餌やりも、拍手の音も遠く感じる。

そして、瑠亜の言葉が頭の中で何度も繰り返される。


イルカのショーの時間。

バッグを抱きしめたまま動けずにいると――

「沙羅」

夕晴がそっと覗きこんだ。

「……どうした?」

涙をこらえきれず、紙袋を差し出す。

「ごめん……ぐちゃぐちゃになっちゃって」

「え?」

さっき瑠亜に言われたことやお弁当が逆さまになったこと、色んな事が混じって涙が止まらない。

常盤くんがそっと中身を開けている。

「弁当……作ってくれてたんだ」

黙ったまま私は頷いた。

「こんなことで泣くなよ」

常盤くんが私の頭を自分の胸に寄せた。

その行為が優しくてまた泣けてくる。