あれから目を瞑ると何度もキスのことが蘇ってきて、しばらく頭から離れなかった。


今日初めてのバイトだというのにこんな状態で大丈夫かな……。


鳳凰の店主である篠原さんが一通りの事を優しく教えてくれたけど、緊張して覚えられない。


「わからなくなったらその都度聞いていいし、夕晴もいるから大丈夫だよね?」


「はい……」


そう、初日は常盤くんも一緒だから心強い。

私のせいで腕を痛めたはずなのに、あれから全く痛そうにしてない。

きっとバイトするきっかけを作ってくれたんだろうけど。

聞かなくても常盤くんの優しさがだんだんわかってきた。

少し離れたところにいる常盤くんに見とれていると、篠原さんに笑われた。


「沙羅ちゃん、見すぎっ」


「あっ、すみません!」