楓は、その近藤日和さんを、
ジムをサボらせ、近くの居酒屋へと連れて行く事に成功していた。
その居酒屋に二人が入って居る時、
私はその居酒屋の出入口が見える場所で待機。
ちょっと、スマホでゲームをしたりして、時間を潰す。
なんだか、そのゲームも集中出来なくて、すぐに飽きて来る。
二時間程して、居酒屋から二人が出て来ると、
私はついに、と息を飲む。
居酒屋から出て来た二人は、
そのままラブホテル街へと向かうように歩いている。
後ろから二人の跡をつけて行くけど、
楓の腕に、近藤日和さんが手を絡めている。
それから、目を逸らしたくなる。
そして、二人は、ラブホテルの建物へと入って行く。
それを、私は鞄から取り出したデジカメで撮る。
そのデジカメも、本当はこんな事に使う為ではなく、
もうすぐ生まれて来るお腹の子供の写真を撮る為に、
この前、楓と一緒に買いに行ったもの。
そう思いながら、私は夫の楓と近藤日和さんがラブホテルへと入る、その決定的瞬間に、シャッターを押す。
二時間程して、二人はそのラブホテルから出て来た。
楓と近藤日和さんは、手を繋いでいた。
私が見ている事知ってて、手なんか繋いで…。
そう、楓に苛立ちを感じるけど、
私はシャッターを押す。
二人はそのまま最寄り駅へと行き、そこで別れた。
乗る電車の方向が違うのだろう。
楓が一人になり、電車に乗り込んだ所で、私は楓に近付いた。
「あ、桃子ちゃん?」
何を思っているのか分からない目を、私に向けて来る。
電車の中は、少し混んでいて。
手摺に捕まる楓の横に、私も同じように立つ。
すると、座っていた前の若い男性が立ち上がり、私に席を譲ってくれた。
そうか。
私は、妊婦か。
私はその男性の好意に甘え、その席に座る。
なんだか、今日は立ちっぱなしで、とても疲れた。
なんだか、俯いたら、泣いてしまいそう。



