「えっと…。
この三人かな?
桃子ちゃんの言う条件に合うのは」


楓は、テーブルの上に、三枚の紙を置く。


その紙にはそれぞれの、女性の名前と年齢、職業等、簡単なプロフィールが書かれている。


今、楓に書かせた。


「この人達の電話番号とか分からないの?」


そう訊く私に。


「流石に、それはお店で厳重に管理されてるから」


楓のその不倫相手候補は、楓の働く店の楓指命のお客さん達の中から選ぶ事になった。



「この三人は独身で、楓が既婚者なのを知っていて、社会的にそれなりに地位があって不倫したなんて周りに知られたら困る人達で。
そこそこお金も持ってそうで。
そして、楓に気が有りそうな女の人達なのね?」


それが、楓に出した条件。


相手の女性が独身の方が良いのは、
逆に相手の旦那から楓に慰謝料を請求されたり、離婚させてしまったり、とにかく、泥沼にならない為。


そして、楓との不倫を周りに知られたら困るから、
すぐにその示談金を払ってくれそうな人。


蓄えが有りそうで。


後は…、これが一番大事で、楓が既婚者だと知った上で、
楓に気が有る人。



「一人、百万ずつで三百万か」


その三枚の紙を見ながら、思う。


三百万あれば、楓の借金は完済出来る。


「そんな上手く行くかな」


楓は、自信がないと言うより、
やる気自体無さそう。


「上手く行くかどうかは、楓次第でしょ?」


「でも、桃子ちゃんは、俺が浮気して嫌じゃないの?
俺、逆なら嫌だけど」


そう訊かれ、考えないようにしていた事が頭に浮かぶ。


そんなの、嫌に決まってるじゃない。


でも、今回はもう本当に楓と離婚しようと迄思ったから、
気持ちだけ一時的に離婚したと思い、その浮気は私には関係ないと割り切る。


それに、このお金がないという状況が、
まともな思考を奪って行っている。


とにかく、お金が欲しい。