本当に仕事なのか、そもそもアイはどんな仕事をしているのか、
ボクはアイのことを知らないまま、アイにのめり込んでいた。
アイがボクの生きる理由になっていた。
アイが居ない生活なんて、考えられなくなっていた。
だから、アイが其処に居るだけでよかった。
きっと世間の恋人同士だって、
お互いのことを1から100まで知り合っているわけじゃないだろう。
元カレや元カノの話をすべて知って付き合うわけでもないだろう。
多少の隠し事だってあるんだろう。
それが、結婚して、夫婦になってから隠し事を作ると、
色々と揉めたり、離婚したりするんだろう。

アイが置いていった煙草に慣れない仕草で火を付け、
初めて吸う煙に噎せ返りながら、そんなことを考え、
胸やけと頭痛を覚えたボクは、ベッドに入り、
そのまま眠りについた。
アイが帰ってきたのは、夜明け前だった。

それからもボクとアイの同棲生活は続き、
2月の誕生日にはアイがボクにスニーカーをプレゼントしてくれた。
「これで年の差が一つ縮んだね」
アイがそう言いながら微笑んだが、
あっという間にアイの誕生日がある4月になり、
「また2つお姉さんになっちゃった」
と言って、少しつまらなそうな顔を作った。
ボクはアイにピアスをプレゼントした。
小さなハート型のピアス。
アイは泣きながら喜んで、すぐにピアスを付け、
鏡を見ながら、また泣いていた。
涙でくしゃくしゃになりながら、
「ありがとう」と言ってボクにキスをした。