長時間泣き続けたせいと、寝不足が続いたせいで(つか)れが(おそ)ってきたのか、シャーリィは気づけば塔の屋上で(ひざ)を抱えたまま、うとうとしていた。そこへ、ふいに頭上から声が降ってくる。

「ここにいたのか、シャーリィ」
「お兄様……?」

 まだ覚醒(かくせい)しきっていないような、どこかぼんやりした顔で、シャーリィは兄の顔を見上げた。

「何があった?最近様子がおかしかったのは、やはり何か大きな悩みがあったせいなのか?」
 問うウィレスの声には、本気の心配がにじんでいた。
 数ヶ月もの間、散々(さんざん)冷たくしてきたにも関わらず、なおも真剣にシャーリィを案じる声。

「……お兄様……っ」
 思わずシャーリィは兄の衣を引き寄せ、その胸に顔を(うず)めていた。
 まだ何も知らず、純粋に兄に甘えていられた頃のように、しがみつき、泣きわめく。

 耳が痛くなるような大きな泣き声を聞かされても、服が涙でぐしょぐしょになっても、ウィレスは眉一つひそめず、シャーリィの()すがままに(まか)せていた。

「悲しいことがあったのか?シャーリィ」
 答えられず、シャーリィはただ嗚咽(おえつ)(こぼ)す。

「理由を話せないのなら、それでもいい。だが、私にできることがあるならば、言え。力は()しまない」
 その言葉に、シャーリィの中で何かが(はじ)けた。