愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)


(お(たが)いに、こんなに強く想い合っているのに、その想いを互いにさえ見せず、胸に隠して生きていく……こんな形の片恋も、あるのね)
 
 この恋の果てに何があるのか、シャーリィは知らない。
 明らかに成就(じょうじゅ)の難しい恋だ。それを続けていくことに、不安が無いと言えば嘘になる。
 
(だけど……私も、(あらが)うわ。あなたが、そうするように……。私も、抗える限りは抗ってみせる。この、片恋の運命に……) 
 胸の中で固く(ちか)いながら、シャーリィは近づいてくるウィレスの顔を見つめる。
 
 自分がどれほどウィレスに愛されているかを、もうシャーリィは知っている。
 たとえ、この恋が叶うことなく終わるとしても……その想いはこの先もずっと、シャーリィを守り、支えてくれるだろう。
 
(片恋姫になるのが怖いから、恋なんて、したくなかった。だけど……今はもう、怖くなんてない)
 
 熱い吐息(といき)(ほほ)をくすぐり、鼓動(こどう)が知らず速くなる。
 
 ただの恋する男女として触れ合えるのは、これが最初で最後かも知れない――だから、その感触も、温度も、息づかいも……何もかも全て、一秒も逃さず覚えておこう……そう決意して、シャーリィはそっと瞳を閉じた。

 初めて(かさ)なるその唇を、抱き()めてくれるその腕を、全身全霊で味わうために。
 彼の与えてくれる恋の感触(かんしょく)を、胸の奥の一番大切な場所に、深く深く(きざ)()むために……。




【 End 】