セラフィニエに(るい)(およ)ばないことを知り、シャーリィはほっと安堵(あんど)の息をつく。が、すぐに顔を(くも)らせた。

「アーベントは……」
「そのことだが、アーベントにはいずれ、ミレイニへ行ってもらおうかと思っている。レグルスがまたこの国を(おとず)れた時、その帰路(きろ)護衛(ごえい)と、ミレア王女に親書(しんしょ)を届けるための使者の一員として」

「え……?でも、アーベントは……」
 怪訝(けげん)そうに首をひねるシャーリィを(さえぎ)り、ウィレスは言葉を続ける。
「……という名目(めいもく)で、ミレア王女に謁見(えっけん)させ、そのお力を借りようと思う。あの方の守護する宝玉なら、アーベントの心を(しば)る光の宝玉の力を、無効化できるだろうからな」

「あ……」
 シャーリィは目を見張った。
 アーベントに対し、シャーリィが罪悪感を(いだ)いていることを、ウィレスはきちんと理解してくれていた。
 それだけでなく、解決策まで(こう)じてくれていたのだ。

「だが、アーベントの心を光の宝玉の呪縛(じゅばく)から解放するということは、お前への(うら)みをも(よみがえ)らせるということだ。無論(むろん)、その時には、改めて(ろう)に入ってもらうことになるが……将来的なリスクを思えば、このままにしておいた方が良いかも知れんぞ」