『ああ……。やっと見つけたわ』
 息を切らして駆け寄って来るセラフィニエ。
 そのドレスに、シャーリィは見覚えがあった。それは、あの仮面舞踏会の夜の……。

『セラフィニエ!? 何故こんな所に!? 』
『あなたに会いに来てはいけなかったかしら?昼間はあまり話ができなかったから』
 そう言って笑顔を向けるセラフィニエに、シャーリィはふと、違和感(いわかん)を覚えた。
 シャーリィと会っている時とはどこか違う、セラフィニエの瞳の色。

『そうですか。分かりました。残念ですが、あなたが選んだ道ですものね。あなたはもう私の兄ではなく、シャーリィ姫の騎士なのですね』
 その(さび)しげな微笑みに、シャーリィの記憶の中のセラフィニエの顔が(かさ)なる。
 
 ――私の望むそのただ一人の人は、決して私を想ってはくれないのよ。だから、いいの。
 
 そう言って、回廊の方へ視線を飛ばしたセラフィニエ。
 今、思い出して気づく。その視線の先に、その時いたのは……。
 
(……まさか、セラ姉さまの好きな相手って……)