「光の宝玉は、他を魅了する力を持ち、特に力を使おうと意識せずとも、自動的に見る者を()きつけます。ですがそれはあくまで、持ち主の『本来持つ魅力』を増幅(ぞうふく)することにより、相手からの好意・恋愛感情を引き出しているだけのこと。相手の心を『意のまま』に(あやつ)って、無理矢理好きになるよう仕向(しむ)けているわけではありません。よって、魅了が通じぬ相手もおりますし、魅了された相手が持ち主に絶対服従するわけでもございません」

 意識せずとも自動的に発生する魅了の力――それが、光の宝玉が『持つ者を美しく光り輝かせる』と言われる所以(ゆえん)だった。
 だが、光の宝玉の力には、その『先』がある。

「ですが、マリア・エルフリーデ姫の伝承にある通り、光の宝玉の力を最大限に引き出せば、相手の心を(しば)り、意のままに操ることも可能です。しかし、それには『代償』が必要となるのです」

「たとえ命までは失わないとしても、精神を病み、肉体を病み、まっとうな生は送れなくなる……のでしたわね」
「その通りでございます。あなた様は当代の光の宝玉姫。よってそのこと、ゆめゆめ、お忘れなきように」
「分かっていますわ」
 うんざりしたように答えた後、彼女は教師に気づかれぬよう小声でぼやいた。

「でも、いざ国が危機に(ひん)したなら、躊躇(ためら)わずこの命を宝玉に(ささ)げろと言うのよね。かつてマリア・エルフリーデ姫がそうなさったように……」