回想を破るように、ふいに間近(まぢか)から鋭い剣戟(けんげき)の音が(ひび)いた。
 アーベントの振り下ろした刃を、ウィレスが剣で受け止めた音だった。

 相手の剣を(はじ)き返した後の一瞬で、ウィレスはシャーリィを後ろへ()き飛ばす。地に(ころ)がったシャーリィは、必死に声を上げた。
「やめて!」

 だが一度始まってしまった戦闘を、そんな叫びで止められるはずもない。
 (すで)に手傷を()い、呼吸も荒いウィレスの不利は、一見しただけでも明らかだった。

「光の宝玉よ!アーベントを止めて!」
 叫んで宝玉の力を放つものの、やはりアーベントには何の効果も現れない。
「やめろシャーリィ!お前が消耗(しょうもう)するだけだ!」
 剣戟(けんげき)の合間から、ウィレスが叫ぶ。その間にもアーベントの剣先に()りつけられ、前髪の一部が宙に舞い散る。
 
 シャーリィはとっさに光の宝玉を(ひたい)に押し当て、目を閉じていた。
 精神を、今までになく深く、深く集中する。今までに使ったことのない力を引き出すために。光の宝玉に全神経を集中させる。

 光の宝玉は、今までにない光を放ち始めた。気づき、ウィレスの顔から血の気が引く。
「まさか……やめろ!シャーリィ!そんなことをしたら、お前が……!」