あの日以来、今度はウィレスがシャーリィのことを、露骨(ろこつ)()けるようになった。
 シャーリィの方も、自分からウィレスに近づくことはせず、宮廷内ですれ違っても、ぎこちなく目を()らして通り過ぎるだけだった。
 
 すっかり笑顔を失くし(ふさ)ぎがちになったシャーリィを、皆が心配する。だがその理由は、事情を知らぬ者達には決して打ち明けられぬもの。
 誰に相談することもできぬまま、ただシャーリィは、消えることのないウィレスへの想いと必死に戦う毎日だった。
 
「姫様。気分転換に、馬に乗って外へ出掛(でか)けませんか?」
 アーベントがそんなことを言い出した時も、シャーリィはあまり気乗りがしなかった。
「馬に乗って?でも、宮殿の外なんて……いいの?」
「王都の外へ出るのは、さすがに難しいでしょうが……王都の(はず)れの丘の上を馬で散策(さんさく)するくらいなら、大丈夫(だいじょうぶ)でしょう。あそこは一応、王家の所有地ですし、こんな晴れた日は、すごく見晴らしが良いですよ」
 熱心に(すす)められて……それに、自分のことを心配してこんな提案(ていあん)をしてくれたのに、断るのも気が引けて、シャーリィは結局(うなず)いた。