いつもの塔の屋上で、シャーリィは(ひざ)(かか)え声を立てずに泣いた。
 今は、大声をあげて泣き(わめ)く気分ではなかった。
 
 泣きながら、シャーリィは心のどこかで期待していた。
 ウィレスは、シャーリィがここで泣いていると、いつも来てくれたから。
 いつものように彼が来て、不器用な言葉で(なぐさ)めてくれるのを……。さっきの言葉は嘘だと撤回(てっかい)してくれるのを待っていた。
 
 だが、いつまで()ってもウィレスは来ない。

(そうよね。来るわけがないわ。あんなことを言ったのに――お兄様の気持ちを知っていたことまで明かしてしまったのに、今まで通り妹として(あつか)ってくれるはずなんてない。きっともう、今までのようにはいられないんだわ。私とお兄様は……)

 言いようのない後悔と絶望が押し寄せてきて、シャーリィは身を(ちぢ)めるように、(ひざ)に顔を伏せた。

(こんなことなら、恋なんてしなければ良かった。全てを()くしてしまうのなら、最初から好きにならなければ良かった。どんなに恋をしたって、所詮(しょせん)、私は片恋姫なのに。恋が実ることはないって、知っていたはずなのに……どうして、恋なんてしてしまったの?)

 涙はとめどなく(あふ)れ、スカートの布地を冷たく()らす。