桜雨、さようなら


 『卒業式まであと一週間』


 黒板に書かれた文字は、誰にも消されることなくカウントダウンを続けている。


 「…おはよう、天音」
 「あ、うん。おはよう…」
 「水、変えてくるな」


 再び登校してきたキミは、挨拶もそこそこに教室に置かれた花瓶の水替えをしていた。


 新鮮な水に交換してもらった花は、昨日まで飾られていた花とは違う花だった。


 「これって……?」


 花瓶には、花開く寸前の桜が、枝と共に凛と佇んでいた。

 え、え?

 これ……まさか……?


 私の目が、自然と通学路の方へ動く。