桜雨、さようなら



 (さくら) 天音(あまね)
 クラスに『桜』とつくのは私の名字にだけだ。


 目の前でむくれる私には目もくれず、キミの視線はスマホの画面に落とされている。

 「…はぁ…」

 私は小さく息を吐き、仕方ないなぁと肩をすくめてみせた。




 「…ちゃんと、書いてよね」




 そんな一言とキミを残して、私はゆっくりと階段を下りていった。