桜雨、さようなら



 「…あいつだけ、まだ書いてないんだよ。桜への寄せ書き」



 ___寄せ書き?


 先生の言葉に、私は弾かれたようにキミを見る。


 いつの間にやら取り出したらしいスマホの上で、キミの指が(せわ)しなく動いていた。


 その光景にぷくりと頬を膨らませ、じとりとした視線を送る。



 「私への寄せ書き、まだ書いてなかったの?」