桜雨、さようなら



 ___先生、捜してるよ?返事しなくてもいいの?



 そう思ったけど、何も言えなかった。
 今日のキミは、どこか雰囲気が違う。


 でも…。

 うーん…?

 やっぱり…。


 ぐるぐる考えたのはほんの一瞬。
 私は、こっそりと階段の陰に隠れて、声が聞こえた方角を覗いてみることにした。


 「あれ、よっちゃん先生?どしたのー?」

 よっちゃん…?
 どうやら捜していたのは、私達の担任、吉井先生だったようだ。
 

 「ちょっと、な。どこかで日吉を見なかったか?」
 「橙太?さぁ…俺は見てないけど」
 「そうか…どこ行ったんだろうなぁ」


 吉井先生は短く切り揃えている短髪をポリポリと掻いて、視線を彷徨(さまよ)わせている。