桜雨、さようなら






 『卒業式まであと三週間!』

 黒板のカウントダウンが進むと同時に、卒業式の準備も進む。


 「…あー…眠い…」
 「もう、食べてすぐ寝ないの。牛になっちゃうよ?」


 屋上へと繋がる三階の西階段に、キミと私が二人並んで座っている。
 購買で買ったパンを三つも食べて、眠そうにあくびを噛み殺すキミに、思わず吊られて出そうになったあくびを我慢した時。


 「い……おーい… 日吉(ひよし)ー…?日吉 橙太(とうた)ー…いるかー…?」


 遠くでキミを呼ぶ、先生の声に気づいた。


 「呼ばれてるよ?」


 声を掛けてもキミは目を伏せたまま、壁にもたれて気怠そうにしている。