桜雨、さようなら


 

 『卒業、おめでとう』



 黒板に大きく書かれたその言葉は、クラスの皆の手によって、とても賑やかな装いとなっていた。


 『元気でな!今までサンキュー!!』
 『次の三年生達をよろしく~』
 『ここで過ごした時間、忘れません』


 個別に渡される寄せ書きとは別に、クラスメイトの皆が黒板に残していった言葉達。
 それは卒業までの一年間を過ごした『この教室』への、感謝とさよならを込めた寄せ書きのようだった。




 満開の桜が咲く通学路。
 毎年、卒業する生徒達を祝うように咲き誇り、その門出を見送るように枝を揺らして花びらを舞わせ、去って行く背中を見届ける。


 「ほら、橙太。皆もう帰っちゃったよ」


 橙太は、卒業式が終わってもまだ教室に残っていた。

 自分の席に座り、一生懸命になって書いているのは、私への…桜 天音への間に合わなかった『寄せ書き』。