桜雨、さようなら




 「あ、言っとくけどそれ、通学路の桜を折って持ってきた訳じゃないからな…普通にじいちゃんの庭に咲いてたやつを貰ってきた」


 ___あ、あぁ…うん!
 お祖父さんの…そうだよね…!

 私は取り(つくろ)うように胸をなで下ろす。
 キミは落とさないように、しっかりと両手で花瓶を抱き、目を細めた。
 

 「やっぱりお前って言ったら、桜だろ」

 





 そう言うとキミは、その花瓶を。





 私の。






 桜 天音の机の上に、優しく置いた。