「ねえ、お兄ちゃん、お茶でも淹れようか」
「いい」
「でも」
隣に座った丞一が不意に力強く抱きしめてきた。
抱擁の強さから、彼がいかに不安だったかを感じた。彼にとっても恐ろしい体験だったに違いない。
「不用意に呼び出しに応じてごめんなさい」
「ぼたんが出て来ざるを得ない理由をつけたんだろう。そして、あいつの目的が俺に暴力を振るわせることなのは、ぼたんに連絡をもらったときから想定していた。乗ってやるつもりはなかったが、おまえが襲われている姿を見たら、怒りを抑えきれなかった」
「よかった……、何もなくて……私も、お兄ちゃんも」
私が雄太郎さんに暴行されていたら、丞一は雄太郎さんの命すら奪ってしまっていたかもしれない。
そして、丞一が踏みとどまってくれなかったら、天ケ瀬全体の問題になっていただろう。私を助けるためとはいえ、あの状況では正当防衛は成立しない。
丞一が私の首筋に顔を埋めて深く息をついた。
「もう少しこうさせてくれ」
「……うん」
私は丞一の背に腕を回し、目を伏せた。
激しく怒り狂っていた丞一と、今不安そうに私を抱きしめている丞一。どちらも同じ彼なのに、私の心の不安は大きくなる一方だった。
「いい」
「でも」
隣に座った丞一が不意に力強く抱きしめてきた。
抱擁の強さから、彼がいかに不安だったかを感じた。彼にとっても恐ろしい体験だったに違いない。
「不用意に呼び出しに応じてごめんなさい」
「ぼたんが出て来ざるを得ない理由をつけたんだろう。そして、あいつの目的が俺に暴力を振るわせることなのは、ぼたんに連絡をもらったときから想定していた。乗ってやるつもりはなかったが、おまえが襲われている姿を見たら、怒りを抑えきれなかった」
「よかった……、何もなくて……私も、お兄ちゃんも」
私が雄太郎さんに暴行されていたら、丞一は雄太郎さんの命すら奪ってしまっていたかもしれない。
そして、丞一が踏みとどまってくれなかったら、天ケ瀬全体の問題になっていただろう。私を助けるためとはいえ、あの状況では正当防衛は成立しない。
丞一が私の首筋に顔を埋めて深く息をついた。
「もう少しこうさせてくれ」
「……うん」
私は丞一の背に腕を回し、目を伏せた。
激しく怒り狂っていた丞一と、今不安そうに私を抱きしめている丞一。どちらも同じ彼なのに、私の心の不安は大きくなる一方だった。



