「もうわかりますね。横領の証拠です」
「こ、れは……」
「言い逃れはできませんよ。証拠を集めるために少し前から泳がせていたんです。まんまと引っかかってくれましたね」
冷徹といっていい表情で、丞一は告げる。
「強硬手段を取ってまで蘭奈を俺の妻に仕立てようとしたのも、この横領をうやむやにするためでしたか? 薬を盛るというのも、刑事事件にできる案件ですよ」
いつからか。雄太郎さんが画策している裏で、丞一は叔母夫妻の失脚を狙っていたのだ。証拠をそろえて、逃げ場を無くして。
雄太郎さんの起こした今日の事件はきっかけであり、決定打になった。
叔母が真っ青な顔で丞一を見つめる。
「丞一さん、これはね……!」
「何を言っても無駄ですよ、叔母さん。俺と親父はあなたたち家族がしでかした罪を、すべて見逃すんです。感謝されても恨み言を言われる謂われはない」
丞一の声はかつて聞いたこともないほど厳しく冷たい。表情は冷徹そのもの。
「相応の待遇は覚悟してもらいましょう」
病室はしんと静まり返り、誰ひとりそれ以上言葉を発せないでいた。
私は丞一の苛烈なまでの怒りに気圧され、うつむいているだけだった。
その日のうちに私は丞一とともに帰宅することができた。義父を実家に送り、ふたりでマンションに戻る。
丞一は私を支え、慎重にソファに座らせてくれる。そこまでしなくても大丈夫なのに。タクシーを降りて横抱きにされなかっただけよかったと思った方がいいだろうか。
「こ、れは……」
「言い逃れはできませんよ。証拠を集めるために少し前から泳がせていたんです。まんまと引っかかってくれましたね」
冷徹といっていい表情で、丞一は告げる。
「強硬手段を取ってまで蘭奈を俺の妻に仕立てようとしたのも、この横領をうやむやにするためでしたか? 薬を盛るというのも、刑事事件にできる案件ですよ」
いつからか。雄太郎さんが画策している裏で、丞一は叔母夫妻の失脚を狙っていたのだ。証拠をそろえて、逃げ場を無くして。
雄太郎さんの起こした今日の事件はきっかけであり、決定打になった。
叔母が真っ青な顔で丞一を見つめる。
「丞一さん、これはね……!」
「何を言っても無駄ですよ、叔母さん。俺と親父はあなたたち家族がしでかした罪を、すべて見逃すんです。感謝されても恨み言を言われる謂われはない」
丞一の声はかつて聞いたこともないほど厳しく冷たい。表情は冷徹そのもの。
「相応の待遇は覚悟してもらいましょう」
病室はしんと静まり返り、誰ひとりそれ以上言葉を発せないでいた。
私は丞一の苛烈なまでの怒りに気圧され、うつむいているだけだった。
その日のうちに私は丞一とともに帰宅することができた。義父を実家に送り、ふたりでマンションに戻る。
丞一は私を支え、慎重にソファに座らせてくれる。そこまでしなくても大丈夫なのに。タクシーを降りて横抱きにされなかっただけよかったと思った方がいいだろうか。



