義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

『じゃあ、あまり人目につきたくもないだろうし、地下の駐車場に来てよ』

何をたくらんでいるかわからない相手だ。迂闊に近づいてはいけない。だけど、もし彼の言っていることに数パーセントでも真実が混じっているなら、丞一本人を傷つけないうちに確認しておきたい。

丞一には雄太郎さんが来ていること、用事があると言われたから地下駐車場に行くことをメッセージで送っておいた。丞一も車で帰宅するはずだ。難癖をつけられても、丞一とすぐに合流できる。
携帯を持ち、地下に降りる。心臓が嫌な音をたてている。

「ぼたんちゃん、こっちこっち」

来客用駐車場ではなく、奥まったスペースに勝手に車を停めて、雄太郎さんが手招きしている。

「ほら、これだよ」

スマホの液晶を見せようとしているので、私は駆け寄った。その瞬間、いきなり腕をつかまれたかと思うと足蹴にされ、車の後部座席に押し込まれた。

「っつ……!」

腹部を蹴られて呻く私の上に雄太郎さんがのしかかってきた。

「や、やめて!」

暴れて振り回した手足がどこかに当たったのだろう。雄太郎さんが顔をしかめ、私の髪をつかんだ。痛いと思う間もなく、用意していたのだろう梱包用のテープを口に張られた。
両手はがっちりとつかまれている。

「簡単に引っかかるなよ」

雄太郎さんが下卑た笑いで見下ろしている。身体の痛みより、ぞわっと背筋が寒くなった。

「どうせ、丞一がすぐに駆け付けるんだろ。その前にここを離れないとな」

何をする気だろう。いや、そんなのはわかっている。この人は丞一に勝てないから、彼を傷つけたいだけなのだ。私を傷つけることによって。