義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

その後ふたりで公園を散歩した。
子どもの頃もこうして母と三人であちこち公園に出かけたっけ。そんな思い出話をしながら、並んで歩くのは幸福な時間だった。
一緒に過ごした丸一日。口にはしないけれど、デートみたいだった。

感慨深い気持ちでマンションの駐車場に到着し、車を降りる。すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「丞一、やっと帰ってきたか」

そこにいたのは雄太郎さんだ。駐車場のエレベーター前に立っている。
驚いた。なぜこんなところにいるのだろう。

「雄太郎、なんの用だ。今日は休日だぞ」
「可愛い義妹とデートか?」
「義母の墓参りだ」
「渋いデートだな」

雄太郎さんはせせら笑うように言う。先日よりも悪意がはっきりと表に出ているように感じた。

「警戒するなよ。母と蘭奈から届けろと言われて、これを持ってきただけだ」

手には大輪のユリの花束がある。

「叔母さんと蘭奈が天塩にかけて育てたものだろう。もらえないよ、俺は」
「そう言うな。蘭奈はおまえに惚れているんだから、受け取ってやれ」
「だから困ると言っているんだ」

頑として拒否をする義兄。だけど、雄太郎さんは受け取るまで帰らないだろう。それに、その間も私と義兄をじろじろと品定めするみたいに眺めている。すごく不快な視線だ。

「お兄ちゃん、綺麗なお花じゃない。頂戴しよう」

この場を収めるつもりで言った。兄が私を見る。