真剣に考えている。考えているからこそ、悩んでいる。
私はなるべく明るい口調で言った。

「私とお兄ちゃんじゃ、釣り合わないよ」
「誰が決めるんだ。天ケ瀬がいかに大きな企業でも、俺個人はただの男だ。俺が好きな相手を妻にしてはいけない理由はない」
「……お父さんはどう思うかな。お兄ちゃんの婚約者を探してるんでしょう。自分の子どもたちが、恋愛で結びついたら……生理的に嫌だとか思わないかな」

ぼそぼそと言う。兄の返事を聞く前に、目の前にアンティパストのお皿が来てしまった。
義兄はフォークとナイフを手に、意にも介さない様子で答えた。

「親父なら知ってるぞ。俺がぼたんを好きで、結婚したいと思ってるって」
「えええっ!?」

思わず大きな声を出してしまい、慌てて口元を抑える。
義父に好きな女性がいると伝えたとは聞いていたけど、それが義妹だと告白しているの? いったいいつ話したのだろうか。

「高校時代からぼたんが好きだと話している。最初は取り合ってくれなくて、見合い相手なんかを探しては紹介してきたけど、俺がぼたんと同居すると言い出してようやく本気だと気づいたようだな」
「待ってよ、お兄ちゃん。お父さんはそれでなんと言ってるの?」