それまで沈黙していた彼の鮮やかな態度に、私はいささか面食らった。親しい関係にあったわけじゃないけれど、こんな陽気な雰囲気の人だったかしら。
雄太郎さんは兄に向き直り、言った。

「丞一、でも以前はそんなじゃなかったじゃないか。その妹にも義理の母親にも冷淡だった。いったいどうしたんだい?」

ぞくりとした。雄太郎さんは口調こそ陽気だったが、義兄を見る目は暗くよどんで見えた。
義兄は、雄太郎さんを一瞥すると、へばりつくような視線をものともせずに答える。

「そうだな。家族の大切さに今更気づいたとでも言っておくよ」

義兄は言葉を切って、叔母家族を厳しい瞳で見つめた。

「俺も大人になったということです」




その後の晩餐会は義父の従兄弟や高齢の伯父伯母などもやってきて、三十名ほどの会となった。天ケ瀬家の客間は洋間で、大きなテーブルが二台並ぶ。そこにつき、皆が義父や義兄と話たがった。
天ケ瀬グループで働く人たちである。血が繋がった親戚同士でも、より本家に気に入られておきたいのだろう。
私は異分子のような気分だったが席だけは義兄の隣なので、否応なくその輪の中にいるしかない。
たまに声をかけてくる親戚もいたけれど、義父や義兄への機嫌とりの一環なのはわかったし、一族を大事にしている天ケ瀬家で私を邪魔に思っているのは叔母夫妻だけじゃない。
ただ、私がびくびくしていては、義父と義兄のためにならないので、背筋をのばし受け答えだけははっきりとした。

「ぼたん、疲れただろう。今度は何もないときにおいで」

先に帰ると言った私を義父は玄関先まで送ってくれた。晩餐会の後も叔母夫妻はいつまでも家に居残っている。