「ほら、キスだけでこんなに喜んでる。俺が嫌なら、おまえは同居には応じなかったはずだ。俺が嫌なら、今この瞬間俺を叩いて暴れる女だ。そのぼたんがこうして俺の腕の中にいる。俺は自惚れていいと思ってる」
駄目だ。恋心はとっくにバレていて、今なお熱く燃えていると気づかれている。
だけど、私は素直に応じるわけにはいかない。
義兄の真意がわからない。
私を好きだと言いながら、どうして背中を向けたの? どうして遠ざけたの?
急に激しい愛と独占欲を見せられて、私は信じていいのかさえわからない。
そして、私がこの人と結ばれてしまったら、義父はどう思うだろう。
義兄の結婚は、同族経営の天ケ瀬家の後継者問題に直結する。有益な家柄の女性を選んだ方がいいに決まっている。あの善良で思いやりのある義父を、困らせたくない。
もっと言えば、亡き母はきっと悲しむ。『丞一坊ちゃんに甘えすぎちゃ駄目』そう言って、義兄と一線を引かせたのは母だ。
「離して、お兄ちゃん」
私はキスから逃れ、決然と言い放った。精一杯の強がりだけど、言わないといけない。
「う、自惚れないで。お兄ちゃんは確かに初恋の人です! だけど、いつまでも子どもじゃないの。私たちは兄妹になったんだし、お兄ちゃんは私とお母さんを避けてた。そんな態度を取る人をいつまでも好きでいるわけないじゃない!」
兄はきょとんとした顔で私を見下ろした。
まるで、突如威嚇をし始めた小型犬でも眺めるみたいな目。いや、きっとその程度にしか見ていない。
真っ赤になって涙ぐんで言う私の言葉なんて、きっとたいして効果はない。
駄目だ。恋心はとっくにバレていて、今なお熱く燃えていると気づかれている。
だけど、私は素直に応じるわけにはいかない。
義兄の真意がわからない。
私を好きだと言いながら、どうして背中を向けたの? どうして遠ざけたの?
急に激しい愛と独占欲を見せられて、私は信じていいのかさえわからない。
そして、私がこの人と結ばれてしまったら、義父はどう思うだろう。
義兄の結婚は、同族経営の天ケ瀬家の後継者問題に直結する。有益な家柄の女性を選んだ方がいいに決まっている。あの善良で思いやりのある義父を、困らせたくない。
もっと言えば、亡き母はきっと悲しむ。『丞一坊ちゃんに甘えすぎちゃ駄目』そう言って、義兄と一線を引かせたのは母だ。
「離して、お兄ちゃん」
私はキスから逃れ、決然と言い放った。精一杯の強がりだけど、言わないといけない。
「う、自惚れないで。お兄ちゃんは確かに初恋の人です! だけど、いつまでも子どもじゃないの。私たちは兄妹になったんだし、お兄ちゃんは私とお母さんを避けてた。そんな態度を取る人をいつまでも好きでいるわけないじゃない!」
兄はきょとんとした顔で私を見下ろした。
まるで、突如威嚇をし始めた小型犬でも眺めるみたいな目。いや、きっとその程度にしか見ていない。
真っ赤になって涙ぐんで言う私の言葉なんて、きっとたいして効果はない。



