義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

「ぼたん、帰るぞ」
「う、うん。狭山さん、林田くん、今日はありがとう。また月曜日にね」

私はふたりを見やって、義兄の後を追った。義兄もふたりに軽く会釈をしたのは見えたけれど、その表情は不機嫌に見えるほど冷たかった。

マンションまではそう遠くない。金曜の夜の繁華街を抜けると、半蔵門近辺はスムーズに進んだ。
義兄はずっと黙っている。横顔が怒っているように見え、私も迎えのお礼以上は言えないでいる。そもそも迎えも頼んでいないんですけど……。

「あのね、お兄ちゃん」

マンションの部屋に帰り着き、荷物を一度ダイニングチェアに置いた。ジャケットを脱いでいる義兄の背中に声をかける。

「今日はありがとう。でも、迎えとか、これからは気にしないでね。会社からここまでも近いし、私ももう大人だし」

すると、ジャケットを片付けた兄が私に歩み寄ってきた。
腰をとらえ、顎をつかみキスしてくる。流れるような動きに、アルコールで反射神経が鈍っていた私は逃げそびれる。
あの日以来のキスだ。二週間ぶりの強引で傲慢なキス。

「男がいたな。おまえの同期」

唇をわずかに話して兄がささやいた。私はキスの余韻にぼうっとしそうになるのを耐え、険しい表情を作った。

「いるよ」
「親しくはなっていないな?」
「お兄ちゃんの考えるような意味ではなってない。でも同期だし、普通に接するつもりだよ。ごはんもお酒も一緒に行くから」

距離をとろうと一生懸命手で胸を押すけれど、義兄のたくましい身体はびくともしない。自身の非力を嘆く間もなく、義兄が再び口づけてきた。