義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

「天ケ瀬さん、今夜ごはん行かない?」

昼休憩時に狭山さんに誘われた。

「三人で研修お疲れ様&仕事頑張ろうの会をしようよ」
「俺、近くに安くてうまい店知ってるんだ」

狭山さんと林田くんに言われ、私はわかりやすく嬉しそうな顔をしてしまった。高校から金沢に行っていたので、友人は皆遠方だ。中学までの友人とはしばらく連絡をとっていないので、こうしてごはんに誘ってくれる友人もいないのである。

「うん、家族に連絡してみるけど、たぶん大丈夫」
「天ケ瀬さん、実家暮らしだっけ」
「私はひとり暮らし。林田くんもだよね」

ふたりは地方出身で、大学からひとり暮らしだそうだ。私はなんと答えようか迷い、素直に言った。

「兄とふたり暮らしなの」
「そうなんだぁ。じゃあ、お兄さんに心配かけちゃまずいもんね」

私の帰宅より義兄の帰宅の方がいつも遅いだろう。それでも、一応報告しておいたほうがいい。
私が送った【同期と会社の近くでごはんと食べて帰ります】のメッセージには【了解】とひとこと返事がきただけだった。