義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

天ケ瀬家に迷惑をかけたくはない。そのために籍を抜くべきではないかと思いながらも、義父のことはいつも気にかかった。

そして、義父を思い出すと先日の義兄からの告白とキスが後ろめたいものに思われた。
義兄の気持ちが本当だとして、義父はどう思うだろう。義兄の婚約者を、今も探しているのではないだろうか。

……いや、兄の婚約者の件は私が心配することじゃない。考えない方がいい。
今は新生活に慣れることが一番。毎日の生活と仕事に集中しよう。



晩餐会を翌日に控えた金曜日、この日が私の研修の終わりだった。
二週間の研修はあわただしく過ぎ、私たちは配属先を告げられた。

私は商品管理部。我が社の商材である輸入食品の在庫管理、倉庫管理を担う部署だ。基本は本社、たまに倉庫や客先に出向くこともあると聞いている。仕入れ先とのやりとりも多いそうだ。多岐にわたる仕事ができそうで、配属を聞いた瞬間からわくわくしてしまった。
狭山さんは経理部、林田くんはセールス部に配属が決まった。
最初から全員が本社配属なのは知らされていた。それでも、二週間一緒に学んだふたりと別な部署に行くのは少し不安でもある。