南都(なつ)がいない高校になれた頃、椿季(つばき)の看護実習が始まった。

「加古(かこ)さん、あなたは何をしているの!?」

ヒステリック気味に声をあげるのは、今、椿季が行っている病棟の指導者。

「ベッドメーキングしてって言ったでしょ!?」

「はい、すみません…」

「ああ、ほら、角がクチャクチャになってるわよ!
これじゃあ、患者さんが嫌な気持ちになるわよ?」

「はい…」

日中は病棟の壁となり過ごし、夜は電話で南都に愚痴る。

南都が大学生になると、デートはほとんどなくなったが、電話は毎日続いていた。

だけど…、

「シーツ交換にうるさいって姑かよ!笑」

「……はは」

最近は椿季が愚痴る度に、小さなため息をつくようになった。