翌年、まもるはアメリカへの転勤が決まった。

将来まもるが世界へ出て行く逸材になることは僕達も子供の頃からうすうす気づいていたので驚きはなかった。

空港で見送る時もいつかまた戻ってくるのだからと僕達は思っていた。

まもるがアメリカへ渡った翌月、僕は部長から会議室へ呼ばれた。

僕と部長の他に社長がいた。

転勤辞令だった。

豆腐地方にある豆腐県だ。

もちろん承諾した。

家に戻りると葉月とまなみが部屋でいつものように話をしていた。

僕は転勤の話をすると、2人は驚き黙ってしまった。

まなみは部屋を出て外へと行った。

葉月は一階にコーヒーを淹れに行くと、僕の横に座り2人分を置いた。

「どれくらいで戻って来れるの?」

「はっきりとした期間はわからない。少なくとも2年はかかる」

彼女はしばらく沈黙を続けた後、私もついて行っちゃダメかな?と聞いた。

僕は少し考え、「ダメだ。まなみはどうなる?」と答えた。

「まなまには君が必要なんだ。それはわかるだろ?」

「私にはあなたが必要なの」

そう言うと彼女は僕の目をじっと見つめた。

まなみは2時間ほどして帰ってきた。

おかえり、僕がそう言うと彼女は少し間を置いて「ただいま」と答えた。

僕は2人にこれからは僕の部屋も今まで通り好きに使っていい、たまには帰ってくると伝えた。

2人は僕の手を握り考え直して欲しいと泣きながら言った。

その時、僕は体が思うように動かないことに気づいた。

少しずつ目の前が真っ暗になり、ふと気がつくと僕はベッドで寝ていた。

どうやら長い夢を見ていたようだ。

テーブルにはなにやら手紙と箱があった。

「眠っていたので起こさずに今日は帰りました。お誕生日おめてどう。今度ご馳走もつくるから楽しみにしててね。 葉月」

箱を開けると僕が好きなメーカーのコットンのパーカーが入ってた。

サイズもちょうどよかった。

僕は冷蔵庫から缶ビールを取り出し、しばらくパーカーを手に取って見ていた。

お祝いをもらったことは嬉しかった。

葉月の存在は慣れてしまうと側にいるのが当たり前に思っていたが、出会ってから初めてそれはかけがえのない大切な存在だと気付かされた。