好きで好きで、でもそれを伝える勇気がなかったから。


でも、今ならきっと……。


そう思って口を開いたときだった。


不吉な音が鼓膜を揺るがした。


カマ男の足音だ!


カマ男の足音が後方から聞こえてきて私とタイセイは同時に振り向いた。


血のついたカマを振り上げた男が大股でこちらへ近づいてきている。


「走れ!!」


タイセイが叫ぶ。


すでにボロボロの体に鞭打って無理やり足を前に出す。


せっかく気持ちを伝えようと思ったのに、それすら奪われてしまうの?


このままなにも言えないで死ぬなんて絶対に嫌……!


ついさっきは消えかけていた生への執着が不意に膨らんでいく。


それは恋をしているからこそのものだった。