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ここへ入ってきたときの扉は、今はもうどこにあるのかわからなくなっていた。


白い壁に吸い込まれるようにして消えていってしまったからだ。


私は通路からここへ入ってきたときのことを思い出して、壁の前をゆっくりと歩いた。


少しでも足の裏に異変があったら気がつけるように、素足だ。


壁の前を何周かしたとき、前に出した右足の裏に突き出したものを感じた。


そこで立ち止まり、足の裏で踏みつける。


すると低いモーター音が聞こえてきたかと思うと、真っ白な壁が左右に開いたのだ。


扉の向こう側には黒い世界が広がっていて、緊張からまた湯葉を飲み込んだ。


靴を履き直し、一旦振り向く。


タイセイが不安そうな顔をこちらへ向けていたので、私はまた微笑んだ。


少し頬が引きつってしまい、あまり可愛くない顔になってしまったかもしれない。


それから真っ黒な通路へと向き直り、私は歩き出したのだった。