「…今日の検査は終わり。お疲れ様、炎帝さん」

「ありがとうございます白銀先生」


久しぶりです。炎帝闇華です。


あの騒動から数ヶ月が経った。

季節は夏。太陽が眩しく、昼間の外は灰になりそうなくらい暑いです。


「でも…意外だったな」

「意外?」


「闇姫と呼ばれたキミがまさかオレのメンテナンスを受けてくれるなんて」

「……」


『闇姫』

それはかつて裏社会で最強と呼ばれた不良少女。それは中学時代の私のこと。


私はある人のために裏社会に堕ちた。

裏社会ではヤクザや人ならざるもので溢れている。その中でも隣町の『闇崎』はとくに治安が悪い。クスリの取引や女子供の誘拐は日常茶飯事。


私は同じ不良である舎弟たちと困っている人たちを助けてきた。助けてきた…といえば聞こえはいいけど私だって数えきれない人を傷つけてきたのもまた事実で。


そんな中、紅い月(ブラッドムーン)が闇崎から広まり出した。


紅い月(ブラッドムーン)

それを摂取すれば人から吸血鬼になることができる。だが成功した例などほとんどなく、数時間後には地獄のような苦しみを味わいながら死んでいく。


それほど危険とされている紅い月(ブラッドムーン)を闇崎の総長である狗遠(くおん)壱流(いちる)という男の子に無理矢理摂取しようとした。その壱流(いちる)こそが私の初恋であり、守りたい人。


それから、いろんなことがあって壱流という少年と共に生きることを決めた私は現在吸血鬼として暮らしていた。