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 それから数週間後、よい知らせが舞い込んだ。

「みんな来週の日曜日に、練習試合が決まったわよ」

「姫川さん、試合の手配ありがとう。それで今度はどこと試合?」

 そう聞いてきたのはキャプテンの拓真だ。

「ん?狼栄(ろうえい)大学高等学校」

 狼栄大学高等学校は犬崎高等学校との距離が、自転車で20分弱と近いため、莉愛は一番最初に練習相手になってくれないかと、相談した学校だった。監督から『一試合だけなら練習試合を引き受ける』と返答があり、喜んだ莉愛だったが、皆の反応は違った。

「……っ」

 みんなの息を呑む音が聞こえた。

 それから、息を合わせたように、皆が叫んだ。

「「「狼栄!!」」」

 うわー。

 ハモるなー。

 声デカいなー。

 耳痛いなー。

 両耳を塞ぎ、そんな事を思っていると、拓真が青い顔をしながら声を荒げた。

「姫川さん、狼栄って……マジであの、狼栄なのか?!」

 何をそんなに皆が焦っているのか分からないが、莉愛はコクリと頷いた。そんな莉愛の反応を見て、拓真が項垂れると、崩れる様に皆が四つん這いになり、青くなった。