「……あ、引き止めて悪い」

「い、いえ!……じゃあ私、これ終わったら帰りますね」

「ああ。お疲れ様」

 悠月さんは優しい微笑みを浮かべると、私の頭を軽くぽんと撫でた。

「……え?」

 い、今!頭撫でてくれた……よね!?

「あ、菜々海」

「は、はい……?」

 突然のことで、頭がパニックになりそうだ。

「今度作る新作の和菓子、食べてくれるか?」

「え? わ、私が……ですか?」

 ウソッ……。本当に?

「ああ、菜々海にぜひお願いしたい」

「は、はい!喜んでっ」

 私が悠月さんの新作和菓子の試作を? 夢見たい……。

「もうすくで完成するから、そしたら食べて感想聞かせてくれ」

「は、はい!」

 嬉しい……。嬉しい!
 私が悠月さんの新作和菓子を食べれるなんて!本当に嬉しい!

「やっぱりここで、働いてて良かった……」

「ん?何か言ったか?」

「い、いえ! お疲れ様でした!」

「お疲れ様」

 私はすぐに片付けを終えると、そのまま更衣室へと向かった。 そして深呼吸をしてから、そっと息を整える。

「好き……」

 その【好き】の気持ちが、今にも溢れだしそうだよ……。