いつかこれでは、見習いたちからパワハラだと訴えられてもおかしくはないかもな……。
 と思いながらも、未だに誰も辞めたいとは思わないらしい。なんでだろうか、と思う。

「菜々海、いちご大福もうすぐ仕上がるってカウンターに伝えてくれるか?」

「はい。分かりました!」

 厨房の前を通りすがった菜々海にそう伝えると、菜々海は明るい笑顔を見せる。

「はあ……」

 最近は菜々海のことが、頭から離れない。菜々海がこの前俺の前で泣いた時、俺はなんであんなことを言ってしまったのかと、心底後悔した。
 菜々海はいつも俺を心配してくれて、俺にいつも「大丈夫ですか?」と声をかけてくれる。
 いつからか俺は、アイツのことで頭がいっぱいになってしまっている。

「悠月さん、ゆづきの注文、入りましたよ?」

「ゆづき了解」

 俺が新作で考案した新作和菓子、その名は【ゆづき】。名前を付けたのは菜々海だ。
 ゆづきをみんなにも食べてもらった所、みんなからも美味しいとの声が出たので、その翌日からゆづきを販売を開始した。

「ゆづき二つ入りまーす」

「ゆづき了解」
  
 ゆづきは手作業で時間がかかるが、注文を頂いてから俺が自分の手で作る。