【なぜか気になるアイツ〜悠月SIDE〜】



「いらっしゃいませ!角野屋へようこそ!」
 
 今日もカウンターにいる菜々海が、明るい声を出している。

「悠月さん、もう少しで饅頭蒸し上がります」

「OK。そしたらそのままいちご大福頼んでもいいか?」
 
「了解です」

 俺は和菓子職人になってもう四年になる。亡くなった父親の跡を継いで、老舗和菓子屋、角野屋という店を任されている。
 和菓子職人になって四年。今では見習いも数人入ってきてくれたおかげで、店を回すことが出来ている。

「早瀬、それ終わったらショーケースにきんつば並べてくれるか?」

「了解です」
 
 一つ一つを手作業で作る和菓子は、とても時間がかかるが、その分和菓子への愛や思いを込めることが出来ている。
 角野屋は昔からの常連様も多く、今では孫の代まで来てくれる人も多い。

「片桐、かぼちゃ饅頭のストック冷蔵庫から出しておいてくれ」

「分かりました」

 和菓子職人を目指す人なんてそんなにいる訳ではないが、こうして和菓子職人を目指して角野屋に入って来てくれたみんなには、本当に感謝しかない。

「悠月さん、黒糖饅頭蒸し上がりました」