悠月さんの和菓子への愛が、とても伝わってくる和菓子だ。
 一口食べただけで、別の世界へと連れて行ってくれるような、そんな風に感じさせてくれる素敵な和菓子だ。

「すごく……すごく美味しいです」

「そっか」
 
 なんていうか、何もかもを忘れさせてくれるような、そんな味がする。
 甘さ控えめなのに優しくて、とてもほっこりするような、そんな味がする。

「ん、この酸味……レモン、ですか?」

「お、正解。酸味を少し出すのに、レモンを加えた。よく分かったな」

 悠月さんにこうして褒めてもらえると、とても嬉しい。
 やっぱり私は、悠月さんのことが好き。悠月さんの作る和菓子が、とても大好き。

「私、悠月さんの和菓子……大好きですから」

 悠月さんのこういう嬉しそうに笑った顔が、本当にたまらなく大好きだ。
 この笑顔を見るだけで、私は悠月さんの近くにいれるだけで、それだけで幸せだ。

「ありがとう、菜々海」

 その大きな手で頭を撫でてくれる悠月さんに、私はこうしてトキめいている。
 悠月さんに好きだって言ったら……悠月さんは迷惑だって思うかな?
 好きの気持ちは、抑えられそうにない……。