「菜々海ちゃん、お疲れ様。お先ね」

「お疲れ様でした!」 

 その数日後、お店が閉店すると、先輩たちは帰っていく。  
 そして私は、いつものようにお店の後片付けをする。 今日もショーケースに入っていた全ての和菓子が完売した。
 
 空になったショーケースを一人でアルコールで拭いていると、突然後ろから「菜々海」と声をかけられる。

「……え?  あ、悠月さん?」

 声をかけてきたのは、悠月さんだった。

「あの、どうかされましたか?」

 私はアルコールをショーケースの上に置き、悠月さんにそう返事をする。

「今からちょっと、時間あるか?」

「え? 今から、ですか?」

 え、何だろう?と考えていると……。

「この前言ってた新作の和菓子が出来たんだ。食べてもらえるか?」

「え? あ、はい!」
 
 この前新作和菓子作ってるって言ってたけど、もう出来たんだ……。
 和菓子を作る厨房へと足を踏み入れると、和菓子の甘いいい香りが漂う。

「新作の和菓子、これなんだ」

「うわっ……!?」

 な、何この和菓子、すごくキレイ。見た目はもちろんだけど、和菓子に使われている彩りもキレイ。