王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく

 檜山は洋服や下着を少なくとも七セットは選んだ。

「ひ、檜山さんっ」

 値段が書いていない。時価なのだろうか。今は円安だ。ということは、輸入物はとんでもない価格にはね上がっているはず。由緒正しい庶民である晴恵の財布には肝試しすぎる。

「智恭」
「私、払えないっ」

 小声になる。

「俺が払う」
「なんでっ?」

 晴恵の悲鳴のような声に、智恭はむしろきょとんとなった。

「恋人へプレゼントするのに理由がいるか?」
「……いや……、くれる額が凄すぎるでしょ……」

 この男の経済観念はどうなっているのだ。
 ルネのところではオーダー、控え目に言ってもセミオーダー。
 プレタポルテはいわゆる吊るし物といえど、一体何桁万円になるのか。ランジェリーだって上下揃って数万円はしたはずだ。
 晴恵の脳内計算機がショートしかけている。

「トモ、晴恵はなにを心配しているんだい?」

 心配そうな表情を浮かべたルネが訊いてきた。

「Elle a peur que je ne puisse pas payer」

 智恭が明らかにこの前の電話とは違う言葉で流暢に答えてるのを晴恵は呆然と見つめていた。