王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく

 スクエアカラーの襟元。身頃部分には、帯の結び方である大きなリボンを縦にしたような立て矢結びを大胆に取り入れた、バイアスの裁断面が複雑な織目と光沢を見せる。

 首に共布で作られた細いリボンには、靴と同じ貝殻とパールのモチーフがつけられた。上から象牙色のシルクジョーゼットのボレロを着せられる。

「いいな」

 智恭の短い賛辞にルネが得意そうな顔になった。

「よし、じゃあ進めてくれ」

 ルネが了承すると、晴恵は再びスタッフに囲まれた。

「あのっ、」

 晴恵は慌てた。なぜ、こんなことになっているのだろう。

「晴恵、大丈夫。三時間もあれば、仮縫いまで進んでいるよ」
「ではなくて、ですね……」

 縫製が間に合うかではなく、なぜ自分のサイズで縫製が始まろうとしているかなのだが。

「これからプレタポルテラインとランジェリーラインが来るからゆっくりしてて」
「え」

 智恭を見れば、平然としている。

「妹がせっかく持ってこなかったんだ。頭のてっぺんからつま先まで俺好みにしてやる」

 ……なにか、恐ろしいことを宣言されたような?