そのシンの問いに私は小首を傾げる。

 シンの言い方は、まるで考えてはいけないように思えた。

 しかし考えようとすればするほど、体がぞわぞわする。

 そう自分の家に入るあの瞬間のようななんとも言えない感覚だ。

 そして私は今からその家に帰るというのか……。


「ん-。今日は辞めとく。せっかくさなちゃんのお母さんに、さなちゃんがお母さんもお母さんと乗る自転車も大好きだったコト伝えて心がほくほくしてるのに、嫌な気分になりたくないもの」

「嫌な気分……か」

「……」

「なによ、二人ともそんな暗い顔して」


 少しは考えろってことなのかな。

 でも二人とも呆れているようには見えないし。

 私は再び前を向くと、自転車をゆっくり漕ぎ始めた。

 先ほどよりもペダルが重いのは、きっと気のせいではないのだろう。

 それはまるで、私の今の気持ちを反映するかのようだった。