「シン?」

「それが、その子の願いだと言ったのか?」

「え?」

「どうして、母親の元へ届けることが終わりとなる? それが望みだと言われたのか、と聞いているんだ」   



 シンに言われ、私は初めて自分が大変な思い違いをしていることに気づいた。

 私はただ、おうちに帰りたいのだと思った。

 でもそれは、所詮私が考えたこの子願いにすぎない。

 本当はこの子がなにを考えて、なにを思っているのかなんて分かりはしないというのに。

 自分勝手な考えで、私は進もうとしていたんだ。それでは押しつけと何ら変わらない。



「そうだね……シンの言う通りだ。うん、ごめん……」

「今から」

「うん。今からこの子のおうちに行こう」

「お、おまえ、人の話きーてたいのかよ」

「聞いていたよ? 聞いていたから、決めたの。だって今の私にはこの子の気持ちや願いなんて分からないんだもの。それなら、一緒に考えて悩むしか方法はないじゃない」