「違うのよ、やっぱりお腹が冷えるといけないから、今女子高生の中では毛糸のパンツや綿のパンツが人気なのよ?」

「夏だぞ、今」

「ほら、クーラーで冷えるから」

「……そんなもんなのか」

「そんなもんなのよ」


 ジトっとした目で見てはいるものの、ほんの少しは信用したようである。

 毛糸のパンツは確かに今履いている子は多い。

 もちろん、冬限定だし、だからと言ってあのパンツは私の物ではないのだが。


「だからほら、今回は頼みごとするのに悪いと思って、シンの好きそうな本をわざわざ電車に乗って買ってきたのよ」

「ああ……、まぁ、それならいいんだが。ただ、あわよくばと思って先に酒とか供えなかったか?」


 なんとも勘が鋭い。手持ちには本はこれしかない。

 この先もし、また頼ることがあったら困ると思って先に他の物を出してみたのだ。


「そんなことないよー。暑いし、やっぱりこっちのがいいかなって思って先に出してみただけだよ。初めから騙す気だったら、わざわざ本まで用意しないし」

「まあいい。で、わざわざこんなもんまで用意して、俺に何の用だったんだ?」


 私はシンに、神隠しから逃れたあとも続く夢の話を聞かせ始めた。