(……な、なんとか間に合った!)
結局、お弁当は作り直した。
汗まみれが嫌だからシャワーで体を流して、それから決めたはずのコーディネートがやはり気にいらず、服を広げてあれこれ迷ってるうちに、ギリギリの時間になって。慌ただしく家を飛び出した。
8月の強い日差しのなか走ったから、結局汗だくでシャワー浴びた意味がない…。
動物園前の広場で待ちあわせてたさくらくんは、すぐわかるように手を振ってくれて。急いでそちらへ駆け寄った。
「ごめんね、遅れた!」
「ううん、いいよ。オレが早く来すぎただけだし。それより、こっち来て」
さくらくんはごく自然に私の手を握り、ゆっくりと、でも私のペースに合わせて歩いた先は、屋根があるあずま屋。周りは緑で囲まれ、噴水があるおかげか吹き抜ける風がひんやり冷たくて気持ちいい。
「座って、ちょっと待っててね」
帽子を深く被り直したさくらくんは、小走りでちょっと離れた場所へ向かうとすぐ戻ってきて私に冷たい麦茶を渡してくれた。
「飲んで。体を冷やさないとね」
そう言って、ドサッと私の隣に座ると缶コーヒーを開けて一気に飲んでた。
さくらくんはGパンに白い開襟シャツにキャップにスニーカーとラフな格好。それが細身にすごく似合ってて…ドキドキした。