「わわ……あ、あちちっ!」

ジュワッ、っと黒い煙が上がる。慌ててたからついつい素手でフライパンを持ち上げようとして、直に触れてしまい火傷してしまった。

「さくら、大丈夫か?」

お父さんが心配したのか台所に顔を出したけど、コンロを背に隠して「だ、大丈夫だから!」と笑ってみせたけど。

「大丈夫じゃないだろう!早く水で冷やしなさい」

お父さんに腕を掴まれて、強引に流水で手のひらを冷やす。ズキズキ痛みだしたから、お父さんの言うとおりだと小さな声で謝った。

「……ごめんなさい」
「急にどうしたんだ、料理なんて今までやった事ないのに」

お父さんが疑問に思うのも無理はない。今まで不器用でめったに台所にも立たなかったくらいだし。
伊東さんと付き合ってる時は用意した食事はすべて冷食や出来合い。
今考えたら、ダメダメな彼女だったな…。

だからこそ、さくらくんには頑張って彼女らしいことをしたかった。今日やっと初デートなんだから、手作り弁当を……と前の夜から仕込みして、朝早く起きて頑張ってみたけど。


目の前に積み上がったのは、訳の分からない物体たちだった。