もう、元には戻れない。
わかっていたはずなのに、願っていた。
『あの日に戻りたい』
彼を困らせるだけの願い事を、ずっと。
「ちがうよ。だって、優心が」
「違う、違う。絶対に音が言ったんだって」
じゃれ合うようにして歩くふたりの声が、風にのってここまで届いてきた。
彼は、前に進んでる。
苦しいけれど、それが現実。
この小さな橋を渡って彼の元へ行く勇気は持ち合わせていない。
わたしは、決めなくてはいけないんだ。
『あの日に戻りたい』
それに代わる願い事を。
今度は、ちゃんと短冊に書けるように。
遠ざかるふたりの背中を眺めながら、そんなことを思った。
【完】



